テレビの嘘を見破る:読了

テレビは、いまや定番の家電の1つと言えると思います。そして、毎日、さまざまな番組が放送されています。本書「テレビの嘘を見破る(今野 勉著)」では、その中でもドキュメンタリー番組に焦点を当てた内容です。
ドキュメント番組は、大概の場合、事実元に作られています。実際の映像や再現映像、ナレーションの組み合わせで、番組は構成されています(個人的なイメージですが)。
このドキュメント番組で忘れてはいけない要素に「やらせ」があります。
本書では、この「やらせ」について、制作者側の視点から、書かれたものです。「やらせ」とは、Wikipediaによると
〜引用〜
やらせとは、事実関係に作為・捏造をしておきながらそれを隠匿し、作為等を行っていない事実そのままであると(またはあるかのように)見せる・称することを言う。
〜引用ここまで〜
やらせ - Wikipedia
とあります。

本書で特に多く紙面を割いているのは、再現や演出のどこまで、またはどのようなことが「やらせ」なのか?という点です。
これはとても深い命題だと感じました。
作為・捏造などについては、わかりやすいので問題はないのです。なぜなら、事実と異なるからです。
しかし、再現映像はどうなのか? 本書ではその「再現映像」について、過去や世界の映像を例に、さまざまな考察をしています。
個人的には、それぞれの言葉について、日本独自でもかまわいないので、明確な定義が必要だと感じました。特に、本書の冒頭で書かれている内容で、「制作者側と視聴者側で意識のズレがある」という話は、その言葉、本書でいえば、ドキュメント番組という言葉に対して、それぞれの立場で、見解が異なることを示しています。言葉の定義ができれば、論点も明確になると思います。
言葉が定義されると、これまでドキュメント番組としていたものが、ドキュメント番組ではなくなるかもしれません。でも、個人的にはそれで良いのではないかと思います。制作者側が発信したいことは、ドキュメント番組ということではなく、映像化された番組の中身だと思うからです。
いままで、あまり考えたことのなかった領域だったので、個人的には非常に参考になりましたし、今後も考えていかなければならないことだと感じました。